社長ブログ

菌とのお付き合い

コロナ禍の第八波も終息し、感染症対策と経済社会活動との両立が加速しつつあります。With Ccoronaの文字通り、新型コロナウィルスとも付き合って行かねばなりませんが、ウィルスや細菌との共存を身近に感ずるのが、酵母菌との付き合いです。
私たちが日々扱っている味噌には酵母菌がいます。味噌や日本酒の醸造では、糀菌の作る酵素がお米のデンプンを糖に分解し、その糖を酵母菌が消費してアルコールなどを生成します。
このプロセスが「発酵」で、酵母菌が無ければ味噌は出来ません。
現在の味噌造りでは、自社に合った酵母菌を培養して使用しますが、以前は味噌蔵にその蔵固有の酵母菌が住み着いていて味噌造りに中心的な役割を果たしていました。
新しい食品工場である当社にも、味噌を大量に扱っている限り、生産ラインの洗浄を徹底したとしても、どこかしらに酵母菌が存在しています。
身近で有用な酵母菌ですが、やっかいな性質も持っています。
酵母菌による発酵の際には二酸化炭素が発生しますので、酵母菌が活動している状態の味噌を袋やカップなどの密封容器に充填すると、容器がパンパンに膨張してしまいます。健康上は全く問題ありませんが、商品としては不良品です。
そこで、酵母菌の活動を抑えるために使うのが「酒精」と表示される食用のアルコールです。酵母菌は自分が作って排出したアルコールが周囲に多くなると活動を止めてしまう性質があります(いわば、自身の排出物で環境が変わると活動出来なくなるという、教訓めいた言い方もできます)。
この性質を利用して、人為的にアルコールを添加して酵母菌の活動を抑えてから、密封容器に充填します(※)。味噌の加工品も同様の処理をして密封容器に詰めます。勿論、水分やPh、温度など、酵母菌の活動に影響を与える様々な要素を総合的に考慮して酒精の使用量を決めており、その当たりは酵母菌との長い付き合いから得たノウハウです。
コロナ禍の影響で、ウィルスや微生物について最新の研究をわかりやすく解説した記事や書籍を目にする機会が増え、人間に対するメリット・デメリットの存在を再認識しています。
味噌屋の酵母菌との付き合いと同様に、デメリットをコントロールして使っている訳ですが、変異したり新たな細菌が出現してデメリットが上回る事態も生じます。都合の悪いことも起きると覚悟して「賢く忍耐強く」付き合っていく必要がありそうです。

(※)酒精を使わず、容器に二酸化炭素を逃がすバルブを付けたタイプもあります。

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